米村明芳先生と杉山義明先生は関西の駿台で人気1・2を争う数学講師です。2人が書いた参考書は『ハイレベル数学の完全攻略』『入試数学「実力強化」問題集』『東大数学プレミアム』『京大数学プレミアム』の4冊で、駿台が出している京大の過去問(青本)も主にこの2人が執筆しています。この記事では4冊のレベルと使う時期を整理し、どんな人がどの本を選ぶべきかを解説します。

米村明芳・杉山義明はどんな講師か

2人とも京大理学部出身で、関西駿台の数学科を代表する講師です。京大対策の講座や京大の青本の執筆を長く担ってきたので京大数学を知り尽くしています。

杉山先生の授業は三段階で進みます。まず問題を見たときに何を考えるのか・どういう問題なのかを解説し、次に答案用紙に書く正式な解答を板書し、最後に問題の背景やどう発展していくのかを深掘りします。解答から入らず考え方から入るこの授業の形がこれから紹介する本にもはっきり表れています。

4冊の早見表

書名著者・出版社収録向いている人
入試数学「実力強化」問題集杉山義明/駿台文庫全分野1292問網羅系の代わりに基礎の定石を固め直したい人
ハイレベル数学の完全攻略(2冊)米村明芳・杉山義明/駿台文庫ⅠAⅡBC[ベクトル]45問・ⅢC[曲線・複素数平面]41問網羅系を終えて難関大の典型を固めたい人
東大数学プレミアム米村明芳/教学社東大の過去問66題東大志望に限らず難関大志望
京大数学プレミアム杉山義明/教学社京大の過去問69題京大志望

完全攻略と実力強化は駿台文庫から、プレミアムの2冊は赤本の教学社から出ています。

入試数学「実力強化」問題集:網羅系の代わりになる1冊

入試数学「実力強化」問題集の表紙

高校数学の全分野(データの分析と統計的な推測を除く)から1題1テーマで1292問を集めた問題集です。問題数がとても多いので青チャートなどの網羅系参考書と併用するのは現実的ではなく、網羅系の代わりとして使う本です。

この本の良さは構成にあります。青チャートは問題のすぐ下に解答があるレイアウトが続きますが、実力強化は問題がずらっと並び、それに対するワンポイントアドバイスがまたずらっと並び、解答もまとめて並んでいます。似た問題が続けて並んでいるので「この問題にはこの定石」という対応を体系化しやすく、イメージとしては単語帳に近い参考書です。入試の基礎の定石を完全にマスターするのに向いています。

一方で解説はかなりシンプルでレイアウトも初学者向きではありません。初めて数学を学ぶ段階で手を出すと苦労します。

向いている人:国立理系の浪人生が浪人の初めに基礎を固め直すとき。青チャートをもう一度一からやるのは面倒だけれど基礎をガチガチに固めたいという人にうってつけです。現役生でも一通り範囲の学習が終わっていて基礎を固める時間が十分にあるなら選択肢になります。

ハイレベル数学の完全攻略:予備校の授業がそのまま本になった解説

ハイレベル数学I・A・II・B・C[ベクトル]の完全攻略 改訂版の表紙 ハイレベル数学III・C[平面上の曲線と複素数平面]の完全攻略 改訂版の表紙

入試の標準からやや難の問題のうち出来・不出来が合否を分ける問題を集めた問題集です。ⅠAⅡBC[ベクトル]とⅢC[平面上の曲線と複素数平面]の2冊に分かれています。

この本には杉山先生の三段階の授業がそのまま表れています。いきなり解答から入るのではなく、問題を見たときに何から考えるのか、どういう類題を頭に入れておけば解ける問題なのかを最初に解説します。その後に解答を示し、最後に深掘りをします。予備校の授業を受けているような感覚で読み進められ、このレベルでこれだけ解説の手厚い参考書はなかなかありません。すごくおすすめです。

使う時期は網羅系参考書を終えてから過去問に入るまでの橋渡しです。同じ位置づけの本に『真・解法への道!』や『1対1対応の演習』があります。解説の濃さで選ぶなら完全攻略です。

東大数学プレミアム:東大志望以外にも勧められる典型問題集

東大数学プレミアムの表紙

米村先生が東大の過去50年の入試から66題を選んだ本です。過去問集という名前ですが性格は完全攻略にかなり近く、東大の過去問を題材にして難関大向けの典型問題を一通り網羅しようというタイプの本です。解説は〔アプローチ〕〔解答〕〔フォローアップ〕の3段構成になっています。

これは東大と京大の過去問の違いでもあります。東大はオーソドックスな問題を小問や誘導付きで出す傾向があるので、過去の東大の問題を遡っていくと難関大の典型問題を一通りさらえます。そのため東大志望はもちろん東大志望以外にも勧められます。

使う時期は網羅系を終えた後で過去問に入る前か、過去問を終えた後にもう一度知識を整理したいときです。

京大数学プレミアム:京大らしい面白い問題を集めた本

京大数学プレミアム 改訂版の表紙

杉山先生が京大の過去の入試(最古は1956年)から69題を選んだ本です。「対称性」「逆なら簡単な問題」「必要から十分」「存在条件」など解き方の発想ごとに章が分かれています。解説の形は完全攻略と同じ三段階です。

東大数学プレミアムとは性格がはっきり違います。かなり昔まで遡って選んでいることもあり、典型を網羅するというより京大らしい面白い問題を集めた趣味的な要素の強い本です。京大志望以外にはそこまで勧めませんが京大志望なら手を出して全く問題ありません。

分量は多くないので京大の過去問を解き切ってしまったときや、過去問に入る前で自信がないときに使うのがおすすめです。

京大の過去問は赤本ではなく青本で

京都大学理系 前期日程 2027年版(駿台の青本)の表紙

京大志望が過去問を解くなら絶対に駿台の青本を使うべきです。青本は京大数学を知り尽くした米村先生・杉山先生が中心になって解答を書いていて、指導経験に裏打ちされた解説が段違いに手厚いからです。赤本と比べると解説の質の差ははっきりしています。

過去問を始める時期や解き方は予想問題集と過去問の使い方の記事で解説しています。

まとめ:使う順番

  1. 網羅系の段階:青チャートなどの網羅系。浪人の初めや範囲学習を終えて時間がある人は実力強化問題集で代えてもよい
  2. 網羅系から過去問への橋渡し:ハイレベル数学の完全攻略、または東大数学プレミアム
  3. 過去問:志望校の過去問。京大志望は青本
  4. 過去問の前後の仕上げ(京大志望):京大数学プレミアム

4冊とも解説の質は折り紙つきです。自分の段階と志望校に合わせて選んでください。

この記事で紹介した参考書

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