『大学入試 飛躍のフレーズ IDIOMATIC 300』は駿台の英語講師・山崎竜成先生による英語表現の参考書です。名前だけ見ると熟語帳に見えますが中身はまったくの別物です。この記事ではこの本が何を覚えるための本なのか、レベルと使い方、そして完成までにどれくらいかかるのかを筆者の体験とあわせて解説します。
| この本の基本情報 | |
|---|---|
| 書名 | 大学入試 飛躍のフレーズ IDIOMATIC 300[音声DL付] |
| 著者 | 山崎竜成(駿台予備学校 英語科) |
| 出版社 | アルク |
| 発売 | 2024年8月 |
| 構成 | 本冊(解説)384ページ+別冊問題集64ページ |
| 別冊問題集 | 空所補充200問・並べ替え100問の計300問 |
| 付属 | 音声ダウンロード・付録PDF |
単語も文法もやったのに英語が書けない理由
多くの受験生は単語を覚えて文法を学び、英文解釈と長文と英作文に励みます。それなのに英語が書けるようにも話せるようにもならず、読むのも遅いままという人がたくさんいます。
原因は英語のコロケーション(自然な単語の組み合わせ)や頻出表現がほとんど頭に入っていないことです。単語の意味を知っていても、英語を話す人がその単語をどう組み合わせて使うのかを知らなければ自然な英文は書けません。読むときも決まった言い回しが一目で分からないので、1語ずつ訳しながら読むことになり遅くなります。
いわゆる受験英語と本物の英語の違いはここにあると筆者は考えています。IDIOMATIC 300はまさにこの部分を埋めるための本です。
著者の山崎竜成先生
山崎竜成先生は駿台予備学校の英語科講師で、以前は大学受験グノーブルでも英語を教えていました。東京外国語大学で英語を専攻し、大学院では言語学と第二言語習得を研究しています。駿台の若手講師の中でも人気と実力を認められている先生です。
先生の指導方針は多くの講師と一線を画しています。授業でも英語のよくある言い回しやコロケーションをとにかく大量に覚えるよう指導し、結局は語彙力が大切だということを繰り返し伝えています。本書でも章の変わり目のページに「英語は暗記が9割」と書かれていて、めくった裏には「やっぱり10割」とあります。少しポップな書き方ですが、これが先生の本音です。
前作には難単語を集めた『大学入試 無敵の難単語 PINNACLE 420』があり、IDIOMATIC 300はその姉妹本にあたります。
熟語帳とは何が違うのか
一般的な熟語帳は「熟語」と「和訳」を1対1で覚える本です。IDIOMATIC 300で覚えるのは英語として自然な言い回しそのもので、受験英語でも実用的な英語でもよく出てくるフレーズが収録されています。
- 例文が主役:フレーズは例文の中で覚えるので、どんな文脈でどう使うのかまで一緒に頭に入る
- 解説の情報量が膨大:1つのフレーズについて関連表現や似た言い回しまで詳しく解説されている
- 「知っている」で終わらせない:別冊問題集で、見て分かるだけでなく自分で書ける・解ける状態にする
コラムは必ず読む:もはやコラムではない
この本はコラムが非常に充実しています。大学入試に直接関係があるうえに、ほかの参考書では見たことがないような構文や文法事項が載っています。
コラムという名前から読み飛ばしたくなりますが、中身は本編と同じくらい大事です。もはやコラムではないので、例文と同じように必ず目を通しましょう。
「300」は逆タイトル詐欺
書名には300とありますが、これは見出しになっている例文の数にすぎません。1つの例文の中に覚えるべき表現がいくつも入っていて、解説には関連表現も大量に載っています。実際に覚える量は300よりはるかに多くなります。
毎日30分から1時間取り組んだとしても、完成までには最低でも半年から1年かかると思っておいた方が良いです。短期間で仕上げる本ではないので、早めに始めて毎日少しずつ進めるのが前提になります。
使い方:筆者のやり方
筆者は次の流れで何周もしながら少しずつ頭に入れていきました。
- 例文を頭の中で暗唱する:毎日の行き帰りの電車の中で、例文を頭の中で暗唱する感じで何周もしました。机に向かわなくても進められるので、毎日続けやすいです。
- 隠して確認する:付属の問題集を解いたり、赤シートで表現を隠したりして本当に出てくるかを確かめました。
- 自分で文を作る:載っている英語表現を使って自分で文章を作ってみました。自分で使ってみた表現は忘れにくく、英作文でもそのまま使えるようになります。
なお著者の山崎先生は、本冊より先に必ず付属の問題集から取り組むように勧めています。見て知っていることと自分で言える・書けることは別物だからです。初めて読むときは問題集で今の自分がどれだけ書けないかを確かめてから本冊の解説を読むと、吸収の度合いが変わります。付録のPDFもダウンロードを忘れないようにしましょう。
早慶と東大・京大での効き方
この本は志望校によって効き方が少し違います。
- 早稲田・慶應:コロケーションや頻出表現そのものが問われる問題が多く、本書の内容が直接的に役に立ちます。
- 東大・京大:本質的な英語力が求められる入試なので、本書のフレーズがそのまま問題になるわけではありません。それでも速読や英作文で効いてきます。決まった言い回しが一目で分かるので速く読めるようになり、英作文では自然な表現で書けるようになります。特に東大とは相性がかなり良いと筆者は感じています。
帰国子女ではない受験生が、どうしても到達できなかったところに到達できる。それがこの本を筆者が神参考書だと考える理由です。実際に東大や早慶の受験生を中心に流行しています。
迷ったら志望校の過去問と目次を照らし合わせる
この本が自分に必要か迷ったら、志望校の過去問と本書の目次を照らし合わせてみてください。熟語とすら認識していなかった定型表現が山ほど出てきて、この本の有用性がすぐに分かるはずです。
本書のはしがきにも分かりやすい例が載っています。京大の長文問題の空所補充で、「記憶という概念は私たちの言語と文化に深く( )いる」という意味の文の空所に入る語を8つの選択肢から選ぶ問題です。
文法や文脈から考えるだけだと、選択肢を1つずつ当てはめて迷うことになります。でもbe deeply ingrained in(〜に深くしみ込んでいる)というフレーズをセットで知っていれば、選択肢を見た瞬間にingrainedを選べます。京大のように本質的な英語力を問う大学でも、こうしたよく使われる組み合わせが実際に問われているのです。
誰がやるべきか:真のてっぺんを狙う人だけ
こうした定型表現は、文法的に解釈したり比喩をかみ砕いたりすれば意味はだいたい分かります。そんなのきりがないから覚えなくていいじゃんと思う人は、この本をやらなくて構いません。
でもこうした表現をセットとして覚えてしまえば、その解釈に脳のリソースを割かなくて済むようになります。空いたリソースをほかの部分に回せるので速く読めるようになり、ネイティブにとって自然な言葉選びもできるようになります。だからこの本は真のてっぺんを狙う人だけが使うべき本です。
- 東大・京大・早慶などの最難関大で、英語を武器にしたい受験生
- 英作文で自然な英語が書けない人や、長文を読むのが遅い人
- 受験に限らず英語を書けて話せるようになりたい社会人
意味がだいたい分かればいいと考える人や、共通テストだけで英語を使う人には向きません。完成までに半年から1年かかるので、受験直前に始めても間に合いません。
いつから始めるか
始める前に、単語帳1冊と英文法の基礎は一通り終えておきましょう。本書の例文で使われている単語自体は難しくありませんが、文の構造が取れないと例文の暗唱が進みません。単語帳はLEAPの記事で紹介しています。
完成までの期間から逆算すると、現役生は高2の終わりから高3の春に始めるのが理想です。そこから入試本番までの約1年をかけて、毎日少しずつ進めていきます。
よくある質問
熟語帳の代わりになりますか?
役割が違うので完全な代わりにはなりません。熟語の意味を覚える本ではなく、英語として自然な言い回しを覚える本です。ただし熟語の多くは例文の中で出てくるので、本書を進めるうちに自然と身につきます。
PINNACLE 420もやるべきですか?
PINNACLE 420は難単語を集めた本なので、必要かどうかは志望校の英文のレベルで決まります。IDIOMATIC 300の方は、英語でてっぺんを狙うなら志望校を問わず取り組む価値があります。
社会人の英語学習にも使えますか?
使えます。受験英語だけでなく実用的な英語でも頻出のフレーズが収録されているので、英語を書けて話せるようになりたい社会人にもおすすめです。
何周すればいいですか?
周回数より、例文を見ずに暗唱できて自分で使える状態になることが目標です。筆者は何周も繰り返して少しずつ頭に入れていきました。
受験診断ドットコム