「文系の数学 良問プラチカ」(文系プラチカ)は、河合出版の入試精選問題集シリーズの1冊です。同じシリーズには理系数学の良問プラチカもありますが、受験生の間で特に有名なのは文系プラチカのほうです。
有名な理由は少し意外なところにあります。文系プラチカは、名前に反して理系プラチカより難しいのです。この記事では、なぜ文系版のほうが難しいのか、誰が使うべきか、そして理系の人があえて文系プラチカを使う意味まで解説します。
- 文系プラチカが理系プラチカより難しい理由
- 文系プラチカのレベルと、向いている人・向いていない人
- 理系の人が文系プラチカを使う意味
- 使い方と、前後に取り組む本
文系プラチカの基本情報
| この本の基本情報 | |
|---|---|
| 出版社 | 河合出版(入試精選問題集) |
| 著者 | 鳥山昌純 |
| 現行版 | 四訂版(2023年10月) |
| 範囲 | 数学I・A・II・B・C |
| レベル | 難関〜最難関。文系の超上位層がぎりぎり手を出せる難しさ |
なぜ文系プラチカは理系プラチカより難しいのか
理由は使える武器の違いにあります。理系プラチカの問題は、数学IIIなどの理系の範囲を使って解くことができます。一方で文系プラチカの問題は、文系の範囲の道具だけで解かなければなりません。使える武器が少ないぶん、同じような問題でも工夫や論理の組み立てが必要になり、難しくなっているのです。
「文系数学」という名前は、文系でも解けるやさしい問題という意味ではありません。文系の範囲で解ける問題が入っている、という意味です。ここを誤解して「文系向けだから標準レベルだろう」と手を出すと、ほとんど解けずに終わることになります。
レベルと必要な力
文系プラチカには、文系の本当に超上位層がぎりぎり手を出せるレベルのかなり難しい問題が入っています。網羅系参考書を1周しただけで取り組む本ではありません。
さらに、論理をしっかり理解していないと答案の意味を理解するのも難しい問題が出てきます。解説を読んでも、なぜその場合分けが必要なのか、なぜその条件で十分なのかが分からないまま進むことになりがちです。論理については数学が伸びない原因は「論理」だったで詳しく書いています。
向いている人・向いていない人
- 上位を目指す文系:難関国公立や最難関の文系数学で、数学を得点源にしたい人
- 数IIIが固まっている理系:典型問題をしっかりやり終え、数IIIも固まったうえで、文理共通の範囲を固めたい人
網羅系の典型問題がまだ身についていない人や、論理に自信がない人には難しすぎます。中堅大や共通テスト中心の文系なら、河合出版の「文系の数学 重要事項完全習得編」のような本のほうが取り組みやすく、効果も出やすいはずです。
理系が文系プラチカを使う意味
理系の人が文系の範囲の問題集を使う意味があるのか、と思うかもしれません。実はかなりあります。
理系の受験生は数学IIIの対策に時間を取られるので、数学IIの多項式関数の微積分が意外と盲点になりがちです。文系の受験生にとってはこの分野が必須なのでしっかり対策しますが、理系の受験生は手が回っていないことがよくあります。文系プラチカはこの文系範囲の微積分が割とまとまっているので、理系がその対策に使うのはかなりありだと筆者は考えています。
多項式関数の微積分でよく問われるのが、次のような問題です(文系プラチカに載っている問題ではなく、この分野の典型例です)。
曲線 \(y=x^3-3x\) に点 \((a,\,b)\) から異なる3本の接線が引けるような \(a,\ b\) の条件を求めよ。
接点の \(x\) 座標を \(t\) とすると接線は \(y=(3t^2-3)(x-t)+t^3-3t\) です。これが点 \((a,\,b)\) を通る条件を整理すると次のようになります。
\[ \begin{aligned} b&=(3t^2-3)(a-t)+t^3-3t \\ &=-2t^3+3at^2-3a \end{aligned} \]ここで論理の確認が必要です。3次関数のグラフでは、異なる点で接する接線が一致することはありません。だから接点の個数と接線の本数が一致し、問題は「\(t\) の3次方程式が異なる3つの実数解をもつ条件」に言い換えられます。
\[ \begin{aligned} g(t)&=-2t^3+3at^2-3a-b \\ g'(t)&=-6t(t-a) \end{aligned} \]\(g(t)\) が極大値と極小値をもち、その積が負になればよいので \(a\neq 0\) かつ \(g(0)\,g(a)<0\) です。
\[ \begin{aligned} &(-3a-b)(a^3-3a-b)<0 \\ \iff\ &(b+3a)(b-a^3+3a)<0 \end{aligned} \]つまり点 \((a,\,b)\) が直線 \(y=-3x\) と曲線 \(y=x^3-3x\) の間にあることが条件です(\(a=0\) のときは両者が一致して条件を満たさないので、\(a\neq 0\) も自動的に含まれます)。微積分の計算そのものより、「接点の個数=接線の本数」と言い換えてよい理由を押さえられるかが問われています。数IIIの計算に慣れた理系ほど、こうした多項式関数の論理の部分を読み飛ばしがちです。
理系プラチカとの違い
左から文系プラチカ、理系プラチカ(数学I・A・II・B・C)、理系プラチカ(数学III・C)です。
| 文系の数学 良問プラチカ | 理系数学の良問プラチカ | |
|---|---|---|
| 冊数 | 1冊(数学I・A・II・B・C) | 2冊(数学I・A・II・B・C/数学III・C) |
| 使える道具 | 文系の範囲だけ | 理系の範囲まで使える |
| 難しさ | 理系プラチカより難しい | 文系プラチカより取り組みやすい |
| 向いている人 | 上位の文系、数IIIが固まった理系 | 網羅系を終えた理系 |
使い方
文系プラチカは覚えるまで何周も回す本ではありません。1問1問と一期一会で向き合う本です。
- 1問に時間をかけて本気で解く:すぐに解説を見ず、方針が立つまで粘る
- 解説は論理を追って読む:なぜその場合分けや言い換えが必要なのかを確かめる。分からなければ論理の本に戻る
- 足りなかったものを言葉にする:知識・方針・論理・計算のどれが足りなかったかを書く
- 解き直しは理由の確認のために1回:答えを覚えるための周回はしない
周回の考え方は参考書は何周すべき?「1冊を完璧に」が正しいのは1冊目だけで詳しく書いています。
よくある質問
網羅系を1周したら文系プラチカに進んでいいですか
早すぎます。網羅系の典型問題がすぐに解けて、さらに1対1などで典型の使い方を仕上げたあとが目安です。論理の基本も入っていないと、解説を読んでも理解できない問題が多くなります。
中堅大志望の文系でも使うべきですか
必要ありません。文系プラチカは文系の超上位層向けの本です。中堅大なら典型問題の定着を優先し、志望校の過去問に早めに移ったほうが得点につながります。
理系はいつ文系プラチカを使えばいいですか
典型問題をしっかりやり終え、数IIIも固まってからです。数IIの微積分や文理共通の分野に穴がないかを確かめる仕上げとして使うのが向いています。
まとめ
文系プラチカは「文系でも解ける問題集」ではなく、「文系の範囲で解く問題集」です。使える武器が少ないぶん理系プラチカより難しく、論理をしっかり理解していないと解説も読みこなせません。
典型問題を仕上げ、論理を学んでから取り組んでください。1問1問と一期一会で向き合う本です。
数IIの多項式関数の微積分など、文理共通の分野の盲点を埋める仕上げに使えます。
文系プラチカは必要ありません。典型問題の定着と過去問を優先してください。
名前に「文系」と付いていても、文系プラチカは難関〜最難関レベルの本です。
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