順像法と逆像法の違いがよく分からないという人は多いと思います。この記事では2007年の東大の問題を両方の方法で解き比べます。最後にはこの2つが実は同じものだということを論理で示します。
順像法と逆像法とは
軌跡や領域の問題には2つの定番の解き方があります。
パラメータの側から考える方法です。文字の1つを固定して残りを動かし、点がどこまで動けるかを調べます。固定した値を少しずつ変えながら結果を並べていくと全体の範囲が見えてきます。動かしてみて行き先を集める解き方だと思ってください。
点の側から考える方法です。点 \((x,y)\) を先に1つ決めて、その点にたどり着くパラメータが存在するための条件を求めます。条件を満たす \((x,y)\) の集まりがそのまま答えになります。行き先から逆にたどる解き方です。
向きが正反対なので別々の技として教わることが多い解き方です。まずは同じ問題を両方の方法で解いてみましょう。
問題
座標平面上の2点P,Qが曲線 \(y=x^2\ (-1\le x\le 1)\) 上を (Pの \(x\) 座標) \(\le\) (Qの \(x\) 座標) を満たすように自由に動くとき、線分PQを \(1:2\) に内分する点Rが動く範囲Dを図示せよ。ただしP=QのときはR=Pとする。
準備と答えの予想
P\((p,p^2)\) ,Q\((q,q^2)\) とおくと \(p,q\) は
\[-1\le p\le q\le 1\quad\cdots①\]を満たして動きます。①を満たす \((p,q)\) の集合をTとおきます。\(\overrightarrow{\mathrm{OR}}=\frac23\overrightarrow{\mathrm{OP}}+\frac13\overrightarrow{\mathrm{OQ}}\) より
\[\mathrm{R}\left(\frac{2p+q}{3},\ \frac{2p^2+q^2}{3}\right)\]Pを1点に止めてQだけを動かすと、RはPを中心にQの描く弧を \(\frac13\) 倍に縮めた弧を描きます。P=QのときはR=Pなので \(y=x^2\) の上にあります。したがってDは放物線 \(y=x^2\) を下の縁にもち、Pを左端 \((-1,1)\) に止めた弧とQを右端 \((1,1)\) に止めた弧を上の縁にもつ形になりそうです。以下ではこれを論理で確かめます。
方針1 順像法で解く
Rの \(x\) 座標をある値 \(k\) に固定して、そのときRの \(y\) 座標がとりうる値の範囲を調べます。\(k\) を \(-1\) から \(1\) まで動かして縦の線分を並べればDになります。
\(\frac{2p+q}{3}=k\) より \(q=3k-2p\) です。これを \(y\) 座標に代入すると
\[y=\frac{2p^2+(3k-2p)^2}{3}=2p^2-4kp+3k^2=2(p-k)^2+k^2\]右辺を \(p\) の関数とみて \(g(p)\) とおきます。あとは \(p\) の動く範囲が分かれば十分です。
\(pq\) 平面で考えると \(p\) の範囲は直線 \(2p+q=3k\) が三角形Tから切り取る線分の \(p\) 座標の範囲です。線分の一端は対角線 \(q=p\) 上の点 \((k,k)\) で、もう一端は直線がTの左の辺 \(p=-1\) と上の辺 \(q=1\) のどちらにぶつかるかで変わります。境目は直線が頂点 \((-1,1)\) を通る \(k=-\frac13\) です。
\(g(p)\) は \(p\le k\) の範囲で減少するので値域は次のとおりです。
- (i) \(-1\le k\le -\frac13\) のとき \(g(k)\le y\le g(-1)\) つまり \(k^2\le y\le 3k^2+4k+2\)
- (ii) \(-\frac13\le k\le 1\) のとき \(g(k)\le y\le g\!\left(\frac{3k-1}{2}\right)\) つまり \(k^2\le y\le \frac32k^2-k+\frac12\)
\(k\) を \(x\) に書き直したものがDです。
方針2 逆像法で解く
今度は点 \((x,y)\) を先に与えて、それがDに入るための条件を書き下します。Dの定義をそのまま論理式にすると次のようになります。
\[(x,y)\in D\iff \exists p\ \exists q\ \begin{cases}2p+q=3x\\ 2p^2+q^2=3y\\ -1\le p\le q\le 1\end{cases}\quad\cdots☆\]☆の上の2式は \(pq\) 平面の直線と楕円の交点を表すので、このまま扱うのは大変です。そこで \(\exists q\) を先に処理します。\(q\) は1つ目の式で \(q=3x-2p\) と1つに決まるので \(\exists q\) は代入するだけで消えます。
\[\begin{aligned}&\iff \exists p\ \begin{cases}2p^2+(3x-2p)^2=3y\\ -1\le p\le 3x-2p\le 1\end{cases}\\[4pt]&\iff \exists p\ \begin{cases}2(p-x)^2+x^2=y\\ -1\le p,\quad p\le x,\quad p\ge \dfrac{3x-1}{2}\end{cases}\end{aligned}\]不等式を満たす \(p\) がなければ条件は偽なので \(x\lt -1\) や \(x\gt 1\) ではDに点はありません。\(-1\le x\le 1\) では \(p\) の下限 \(-1\) と \(\frac{3x-1}{2}\) のどちらが大きいかで分けます。
(i) \(-1\le x\le -\frac13\) のとき
\[(x,y)\in D\iff \exists p\in[-1,\,x]\ \ g(p)=y\iff x^2\le y\le 3x^2+4x+2\](ii) \(-\frac13\le x\le 1\) のとき
\[(x,y)\in D\iff \exists p\in\left[\tfrac{3x-1}{2},\,x\right]\ \ g(p)=y\iff x^2\le y\le \tfrac32x^2-x+\tfrac12\]ここで \(g(p)=2(p-x)^2+x^2\) としました。最後の同値は \(g\) が \(p\le x\) で減少することから従います。
答え
Dは \(y=x^2\ (-1\le x\le1)\) を下の境界とし、\(y=3x^2+4x+2\ (-1\le x\le-\frac13)\) と \(y=\frac32x^2-x+\frac12\ (-\frac13\le x\le1)\) を上の境界とする領域で、境界を含みます。上の2本はそれぞれPを \((-1,1)\) に止めたときとQを \((1,1)\) に止めたときのRの軌跡で、最初の予想と一致します。順像法でも逆像法でも同じ答えが出ました。
実は同じものでした
2つの解答を並べてみます。
| 段階 | 順像法 | 逆像法 |
|---|---|---|
| 出発点 | \(x=k\) と固定する | \((x,y)\) を先に与える |
| \(q\) を消す | \(q=3k-2p\) を代入 | \(\exists q\) を代入で消す |
| \(p\) の範囲 | Tの切り口の線分 | 不等式を \(p\) について整理 |
| 場合分け | \(k=-\frac13\) で分ける | \(x=-\frac13\) で分ける |
| 最後の一歩 | \(g(p)\) の値域 \(g(I)\) を求める | \(\exists p\in I\ \ g(p)=y\) を調べる |
出発点の言い方が違うだけで \(q\) の消し方も \(p\) の範囲も場合分けの境目も同じです。最後の行も値域の定義
\[y\in g(I)\iff \exists p\in I\ \ g(p)=y\]により同じことを言っています。これは偶然ではありません。理由は軌跡の定義にさかのぼると分かります。
点Rが動く範囲Dとは \((p,q)\) の動く範囲Tのすべての点を代入して得られる点を集めたものです。
\[(x,y)\in D\iff (x,y)=\mathrm{R}(p_1,q_1)\ \lor\ (x,y)=\mathrm{R}(p_2,q_2)\ \lor\ \cdots\]順像法は無数の代入結果をこのように「または」でつないで集めています。一方で「存在する」は本質的に「または」と同じです。A君からD君の中に身長180cmの人が存在することと、A君かB君かC君かD君の誰かが180cmであることは同じことを言っています。したがって上の式は次のように書けます。
\[(x,y)\in D \iff \exists (p,q)\in T\ \ \ \mathrm{R}(p,q)=(x,y)\]これは逆像法の出発点そのものです。つまり順像法と逆像法はどちらも軌跡の定義を言い換えたものにすぎません。逆像法は定義を論理記号で書くことで同値変形を代数的に進められるようにした方法だと言えます。
値域 \(g(I)\) も区間 \(I\) のすべての \(p\) について \(g(p)\) の値を「または」でつないだものなので、表の最後の行が一致するのも同じ理由によります。2つの方法の違いはこの「または」をグラフで束ねるか \(\exists\) のまま式で変形するかだけです。なお逆像法の最後の \(\exists p\) は「\(p\) の2次方程式 \(2p^2-4xp+3x^2-y=0\) が区間に解をもつ条件」と読んで解の配置で処理してもかまいません。
よくある間違い
逆像法で \(\exists p\) を「実数解をもつ」とだけ読むと \(\frac{D}{4}=2(y-x^2)\ge0\) から \(y\ge x^2\) となり、放物線の上側全体が答えになってしまいます。\(p\) には \(-1\le p\) などの範囲がついているので、必要なのは「区間の中に \(p\) が存在する」条件です。
\(p\) の下限を \(-1\) だけだと思い込むと \(x\) 全体で \(y\le 3x^2+4x+2\) となり、\(x\gt -\frac13\) で領域が大きくはみ出します。\(q\le1\) から来る \(p\ge\frac{3x-1}{2}\) を忘れないようにしましょう。
順像法で \(x=k\) を固定したあとに動くのは \(p\) だけです。\(y\) 座標を \(f(k)\) のように \(k\) の関数として書くと、どの文字を動かして値域をとるのかが見えなくなります。
発展:原題の場合
原題には (Pの \(x\) 座標) \(\le\) (Qの \(x\) 座標) の条件がありません。\(p\gt q\) の場合は \((p,q)\to(-p,-q)\) と置き換えると \(p\lt q\) の場合に帰着し、このときRは \((x,y)\to(-x,y)\) と移ります。したがって原題の答えは本記事のDと、それを \(y\) 軸に関して折り返した図形を合わせたものになります。
この考え方をもっと学ぶなら
軌跡や領域を論理で処理するこの記事の考え方は網羅系の参考書ではあまり扱われません。体系的に身につけたいなら次の本を使ってください。
池田洋介による分野別標準問題精講の1冊です。方程式・図形・関数を1つの見方でとらえ直せるので、この記事のような論理の使い方を学ぶならまずこれを選んでください。
Amazonで見る →Amazonのアソシエイトとして、当メンバーは適格販売により収入を得ています。当サイトは楽天アフィリエイトに参加しています。
受験診断ドットコム