「数学の真髄」は東進の青木純二先生による講座の名前として知られていますが、同じ名前で東進ブックスから参考書も出ています。現在刊行されているのは『数学の真髄 -論理・写像-』(2022年)と『数学の真髄 -ベクトル-』(2024年)の2冊です。東進に通っていなくても青木先生の講義を本で読めることが、このシリーズの一番の価値です。講座版については東進の数学講座の記事で紹介しているので、ここでは書籍版に絞って解説します。
シリーズに共通する考え方
2冊に共通するのは、解き方を1題ずつ覚えるのではなく1つの概念を理解して100題を解けるようにするという著者の立場です。著者は高校数学の一番の目的を論理的思考力を鍛えることに置いていて、三角関数や微積分はそのための道具だと位置づけています。
もう一つの柱が、公式は暗記するものではなく意味を考えれば自分で導けるものだという視点です。2冊とも公式を覚えさせるのではなく、なぜその公式が成り立つのかから説明していきます。
想定読者は教科書を一通り終えて、章末問題や傍用問題集をある程度スラスラ解ける難関大志望者です。文系か理系かは問いません。
『数学の真髄 -論理・写像-』
シリーズの土台となる1冊です。命題と条件の違いや「⇒」と「→」の使い分けなど、多くの受験生が曖昧なまま使っている論理の基礎から入ります。抽象的になりがちな論理の話を身近な具体例で説明していくので、講義を聞いているような感覚で読み進められます。
例題で考え方を学んだあとに、各Partの最後にある実践問題で入試問題に取り組む構成です。実践問題は論理的な答案を書く練習も兼ねています。
注意したいのは「初見の問題に対応できる力」の意味です。本書で鍛えられるのはひらめきや発想力ではなく、論理と写像を正確に使えることから生まれる対応力です。奇抜な解法を期待して読むと肩透かしに感じるかもしれません。
『数学の真髄 -ベクトル-』
ベクトルと三角関数を本質から理解し、図形問題を論理的に考える力を養う1冊です。一次独立・斜交座標・符号付き長さ・正射影ベクトルなど、教科書には出てこないものの入試問題を解くうえで必要になる概念を講義形式で扱います。
特徴は計算よりも図形的な考察を重視している点です。入試には意味を考えれば計算せずに答えが出る問題が少なくないという立場から、図を使って問題の構造を見抜く解き方を示していきます。当サイトの「ベクトルは計算だけでは伸びない」で書いた考え方を、さらに深いところまで掘り下げた内容とも言えます。
論理・写像編と同じく各Partの最後には実践問題があり、答案作成の練習ができます。
講座版との違い
講座「数学の真髄-基本原理追究編-」は数列・確率・多項式・合同式なども扱いますが、書籍は論理・写像とベクトルの2テーマに絞られています。東進wikiでも、書籍は講座の内容をすべてカバーするものではないと書かれています。
そのため書籍は講座の代わりというより、講座の核となる考え方を2つのテーマで味わえる本と考えるのが適切です。講座を取らない人は書籍だけでも青木先生の考え方の核を得られます。講座を受講した人にとっては復習や深掘りのための教材になります。
使う時期と前提
取り組む時期の目安は、網羅系参考書で典型問題が一通り解けるようになったあとから難関大の過去問に本格的に入る前までです。数学Ⅰ・A・Ⅱ・B・Cの学習が終わっていない段階で手を出すのはおすすめしません。外部のレビューでは、河合塾の全統模試で偏差値65以上を一つの目安としています。
合わない人もはっきりしています。1冊で多くの問題パターンを処理したい人や、穴埋め形式が中心の試験を本命にしている人には本書の方向性は合いにくいでしょう。
読み終えたら志望校の過去問に取り組み、本書で身につけた考え方で論理的な答案を書けるかを試してみてください。過去問の解答を読んだときに「なぜこの式変形が許されるのか」が分かるようになっていれば、本書の効果が出ている証拠です。
2冊はどちらから読むか
基本的には論理・写像編から読むのがおすすめです。論理はシリーズ全体の土台であり、ベクトル編を読むときにもその考え方が前提になります。ベクトル編はベクトルや図形問題を苦手としている人が補強として後から読むのが効果的です。
なお論理・写像編の一部の解説ではベクトルが使われています。文系の受験生はその部分を読み飛ばしてよいとされているので、ベクトルが未習でも論理・写像編から始めて問題ありません。
受験診断ドットコム