整数問題は多くの受験生が苦手に感じる分野です。決まった公式が少なく、問題ごとに違う発想が必要に見えるので「センスの分野」と敬遠されがちです。
でも実は、整数問題の解き方は本質的には1つしかありません。それは「必要条件で絞る」ことです。この記事では、なぜ絞るだけで解けるのか、絞るための3つのパターン、そして解いたあとに忘れてはいけない確認までを例題で解説します。
- 整数問題の解き方が「必要条件で絞る」1つにまとまる理由
- パターンを覚える前に押さえたい「代入して実験する」習慣
- 絞るための3つのパターン(積の形・余り・範囲)と例題
- どのパターンを使えばいいかの見分け方
- 整数問題を鍛える参考書と取り組む順番
整数問題の本質は「必要条件で絞る」
整数は飛び飛びの値、つまり離散的な値しかとりません。ここが実数との一番大きな違いです。
たとえば \(1<x<5\) を満たす実数 \(x\) は無限にあります。有理数や無理数に限っても無限です。ところが整数に限ると \(x=2,\ 3,\ 4\) の3つしかありません。上と下に閉じた範囲が決まれば、その中にある整数は必ず有限個です。
つまり整数問題では、答えの範囲さえ絞り込めれば、あとはその中の候補を1つずつ調べるしらみつぶしで解けます。だから整数問題の勝負は「どうやって候補を有限個まで絞るか」に集約されます。
ここで使うのが必要条件です。「答えが整数になるなら、少なくともこうでなければならない」という条件を見つけて候補を減らしていきます。必要条件と十分条件の考え方は数学が伸びない原因は「論理」だったで詳しく書いています。整数は論理が直接効く分野の代表です。
パターンの前に:まず代入して実験する
整数や数列は離散数学と呼ばれる分野で、共通する大きな特徴があります。代入して実験することがかなりのキーポイントになることです。いろいろな解法パターンを覚える前に、まずこのことをしっかり押さえてください。
代入が役に立つ場面は大きく2つあります。
- 問題文の意味をつかむ:問題文が何を言っているのかよく分からなければ、実際に整数を代入してみます。具体的な数で考えると、何を示せばいいのか、どんな答えになりそうかが見えてきます。
- 答えを検算する:答えが出たら、元の式に代入して本当に成り立つかを確かめます。整数の答えは代入しやすいので、検算のコストが小さい分野です。
「すべての整数 \(n\) について \(n^3-n\) は \(6\) の倍数であることを示せ」と言われても、ピンとこなければ代入してみます。
確かにすべて \(6\) の倍数です。さらに \(n^3-n=(n-1)n(n+1)\) と因数分解すると、連続する3つの整数の積だと分かります。連続する3つの整数には \(2\) の倍数と \(3\) の倍数が必ず含まれるので、\(6\) の倍数になる、という証明の方針が実験から自然に出てきます。
分からなければ代入する。答えが出たら代入する。整数と数列ではこれが一番の基本です。ただし代入で見つけた規則や答えは、あくまで手がかりです。答案では、次に見る必要条件で絞る方法で、それ以外に答えがないことを示します。
絞るための3つのパターン
必要条件で絞る方法は、大きく分けて次の3つです。
| パターン | やること | 使いどころ |
|---|---|---|
| 積の形に持ち込む | 式を「整数×整数=定数」の形に変形し、約数の組み合わせで絞る | 和と積が混ざった等式(\(xy+ax+by=c\) など) |
| 余りを使う | ある数で割った余り(mod)で分類し、ありえない場合を消す | 「解をもたない」「〜の倍数」を示す問題、指数や2乗を含む式 |
| 範囲を絞る | 大小関係や不等式から、変数がとれる範囲を有限にする | 分数の和、対称な式、文字の大小を仮定できる式 |
パターン1:積の形に持ち込む
\(xy-2x-3y=0\) を満たす正の整数の組 \((x,\,y)\) をすべて求めよ。
このままでは手がかりがありません。両辺に \(6\) を足すと左辺が因数分解できます。
\[ \begin{aligned} xy-2x-3y+6&=6 \\ (x-3)(y-2)&=6 \end{aligned} \]\(x-3\) と \(y-2\) は整数で、積が \(6\) です。つまり2つとも \(6\) の約数でなければなりません。これが必要条件で、候補は約数の組の有限個に絞られます。さらに \(x\geqq 1,\ y\geqq 1\) から \(x-3\geqq -2,\ y-2\geqq -1\) です。両方とも負だと積は \((-2)\times(-1)=2\) 以下にしかならず \(6\) になりません。残るのは正の約数の組だけです。
\[ \begin{gathered} (x-3,\ y-2)= \\ (1,6),\ (2,3),\ (3,2),\ (6,1) \end{gathered} \]よって \((x,\,y)=(4,8),\ (5,5),\ (6,4),\ (9,3)\) です。「積の形にすれば約数の組で絞れる」のが整数ならではの強みです。実数なら積が \(6\) になる組は無限にあります。
パターン2:余りを使う
\(x^2-3y^2=2\) を満たす整数の組 \((x,\,y)\) は存在しないことを示せ。
整数を \(3\) で割った余りで分類します。2乗の余りは次のようになります。
\[ \begin{gathered} x\equiv 0,\ 1,\ 2 \pmod 3 \\ \Longrightarrow\ x^2\equiv 0,\ 1,\ 1 \pmod 3 \end{gathered} \]一方、式から \(x^2=3y^2+2\) なので \(x^2\equiv 2 \pmod 3\) でなければなりません。これが必要条件ですが、2乗を \(3\) で割った余りは \(0\) か \(1\) にしかならないので、この条件を満たす \(x\) は存在しません。よって整数解は存在しません。
余りで分類すると、無限にある整数を「余り \(0,\ 1,\ 2\) の3種類」という有限個のグループで調べられます。余りを使うのは、無限の整数を有限のグループに絞る方法です。どの数で割るかは、式に出てくる係数(ここでは \(3\))に注目すると見つかります。
合同式は使っていいのか
上の例で使った \(\equiv\) は合同式という書き方です。高校数学では発展的な内容の扱いで、授業で習う高校もあれば習わない高校もあります。それでも東大や京大のような大学を目指すなら、筆者は必須だと考えています。
合同式はあくまで記法なので、使わなくても本質的には同じように解けます。ただ合同式で書くほうが圧倒的に楽なので、入試というシビアな現場では使うべきです。合同式を使うと減点されると言う人もいますが、筆者の経験上それはありえません。最終的には自己責任ですが、基本的には大丈夫だと考えて差し支えありません。
パターン3:範囲を絞る
\(\dfrac{1}{x}+\dfrac{1}{y}+\dfrac{1}{z}=1\)、\(x\leqq y\leqq z\) を満たす正の整数の組 \((x,\,y,\,z)\) をすべて求めよ。
\(x\) がいちばん小さいので \(\dfrac{1}{x}\) がいちばん大きく、3つの和は \(\dfrac{3}{x}\) 以下です。
\[ 1=\frac{1}{x}+\frac{1}{y}+\frac{1}{z}\leqq\frac{3}{x}\quad\therefore\ x\leqq 3 \]また \(x=1\) だと \(\dfrac{1}{x}\) だけで \(1\) になり、残りの和が \(0\) になってしまうので \(x\geqq 2\) です。これで \(x=2,\ 3\) の2通りに絞れました。あとは同じ考え方で \(y\) を絞ります。
- \(x=2\) のとき \(\dfrac{1}{y}+\dfrac{1}{z}=\dfrac{1}{2}\leqq\dfrac{2}{y}\) より \(y\leqq 4\)。\(y=2\) では \(\dfrac{1}{z}=0\) となるので \(y=3,\ 4\)。\(y=3\) なら \(z=6\)、\(y=4\) なら \(z=4\)
- \(x=3\) のとき \(\dfrac{1}{y}+\dfrac{1}{z}=\dfrac{2}{3}\leqq\dfrac{2}{y}\) より \(y\leqq 3\)。\(y\geqq x=3\) なので \(y=3,\ z=3\)
答えは \((x,\,y,\,z)=(2,3,6),\ (2,4,4),\ (3,3,3)\) です。大小を仮定していちばん小さい文字の範囲から絞るのが、対称な式でよく使う手順です。
絞ったあとは十分性を確かめる
必要条件で絞って出てきたのは、あくまで「答えの候補」です。候補が本当に条件を満たすかは、元の式に戻して確かめる必要があります。
ここでも代入が役に立ちます。たとえばパターン1の答え \((4,8)\) を元の式に入れると \(32-8-24=0\) で、確かに成り立ちます。パターン1で \(x-3\) と \(y-2\) がともに負の組を消したのも、パターン3で \(y\) と \(z\) を元の式で決めたのも、この確認の一部です。必要条件で絞り、十分性を確かめる。この2段構えが整数問題の答案の型です。候補を出しただけで答えにすると、条件を満たさないものが混ざって減点されます。
どのパターンを使うかの見分け方
問題を見たら、まず次の順に考えてみてください。
- まず代入して実験する:小さい整数をいくつか代入して、問題の意味や答えの見当をつける
- 積の形にできないか:和と積が混ざった等式なら、定数を足し引きして因数分解できないかを試す
- 大小を付けられないか:分数の和や対称な式なら、文字に大小を仮定して範囲を絞る
- 余りで矛盾が出ないか:「存在しないことを示せ」や倍数の問題なら、係数に出てくる数で割った余りを調べる
難しい問題でも、たいていはこの3つのパターンの組み合わせです。たとえば余りで候補を減らしてから不等式で範囲を絞る、といった形です。
整数問題を鍛える参考書
左から志田晶の集合・論理と整数の講義本、整数の分野別標準問題精講、マスター・オブ・整数です。講義本で必要条件で絞る考え方と3つのパターンを理解し、標準問題精講で入試標準の問題に当てはめます。志望校で整数がよく出る人は、マスター・オブ・整数でさらに深めます。詳しくはマスター・オブ・整数のレベルと使い方で紹介しています。
よくある質問
新課程でも整数問題の対策は必要ですか
新課程では整数は数学Aの「数学と人間の活動」に入り、共通テストの出題範囲には含まれていません。個別試験では出題が絞られる傾向にあるので、まず志望校の過去問で整数がどれくらい出ているかを確かめてください。よく出る大学なら対策は必須です。
合同式は答案で使っても減点されませんか
筆者の経験上、合同式を使ったことで減点されることはありません。高校では発展的な内容の扱いですが、記法として広く使われていて、書くほうが圧倒的に楽です。東大や京大を目指すなら身につけておくべきだと筆者は考えています。
小さい値を代入して答えを見つけるのはだめですか
だめどころか、整数と数列では最初にやるべきことです。問題の意味をつかむ手がかりとしても、検算としても有効です。ただし答案では、それ以外に解がないことを必要条件で絞って示さなければなりません。代入で見つけただけでは「ほかにもあるかもしれない」可能性を消せていません。
3つのパターンのどれも使えないときはどうすればいいですか
まず問題文の条件を言い換えられないか考えてください。「〜が整数になる」なら分母が分子を割り切る、「〜が素数」なら約数が1と自分しかない、のように言い換えると、3つのパターンのどれかに持ち込めることがほとんどです。
まとめ
整数問題ではまず代入して実験し、問題の意味と答えの見当をつけます。そのうえで、整数は離散的な値しかとらないので範囲が決まればその中の整数は有限個です。だから整数問題は、必要条件で候補を絞り、残った候補をしらみつぶしで調べれば解けます。絞り方は積の形・余り・範囲の3つで、絞ったあとは十分性を確かめます。
「必要条件で絞る」という1つの考え方から、3つのパターンを例題で身につけてください。講義本から始めるのがおすすめです。
パターンを選ぶ手順を意識しながら、分野別標準問題精講で入試標準の問題に当てはめる練習をしてください。
マスター・オブ・整数で基礎から最高峰まで深めてください。ほかの頻出分野が固まってからがおすすめです。
整数問題はセンスの分野ではなく、必要条件で絞る分野です。
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