生物は守りの科目です。最短の時間で必要な点数を確保してあとの時間は数学や英語に回す。これが東進で長く生物を教えてきた田部眞哉先生の考え方で、その思想がいちばん色濃く表れているのが『生物合格77講【完全版】』です。この記事では77講がどんな本なのかとレベル・使い方・一緒に使う問題集・大森徹先生の最強講義との違いまでを解説します。

この本の基本情報
書名生物合格77講【完全版】2nd edition
著者田部眞哉
出版社東進ブックス(ナガセ)
判型・ページ数A5判800ページ
範囲生物基礎+生物(13章77講)
索引巻末に約3,500語
レベル定期テスト〜東大・京大
課程旧課程(2020年刊)
生物合格77講【完全版】(田部眞哉)の表紙

田部眞哉先生はどんな講師か

田部先生は東京農工大学農学部を卒業し同大学院の修士課程を修了したのち研数学館と河合塾を経て1997年度から東進で教えてきた生物科の講師です。河合塾と東進でトップ講師として名前を知られたカリスマ的な存在でした。筆者の知る範囲では現在は授業から退き執筆を中心に活動しています。

著書は77講のほかに『田部の生物基礎をはじめからていねいに』『生物問題集 合格177問』『生物問題集 合格100問』『生物一問一答【完全版】』などがあります。東進の講師紹介では過去40年分の入試問題を分析し出題をグラフ・計算・論述などのパターンに分けて対策を示す講師と紹介されています。

生物は教科書がすべて

田部先生に限らず多くの講師が口をそろえるのが「生物は教科書をしっかり学ぶことが何より大切」という点です。教科書を完璧にすれば東大や京大でも知識の面で足りなくなることはありません。

入試で知識以外に求められるのは少しの典型問題と思考力です。典型問題は数が限られているので押さえるのは難しくありません。思考力のほうも教科書の内容を本当に理解しているかどうかが必要条件になります。結局のところ生物の勉強は教科書を完璧にすることに行き着きます。

77講は「教科書+図録+入試情報」の3点セット

ところが教科書はシャープにまとめられた本です。説明は簡潔で絵もそれほど多くなく用語は無機質に並んでいます。懇切丁寧に分かりやすく書かれた本ではありません。

77講はその教科書の内容をイラストを交えて懇切丁寧に解説し「入試ではこう問われる」というプチ情報まで大容量で載せた本です。学校で配られた図録を思い浮かべると分かりやすく、77講は教科書と図録と入試情報の参考書の3冊を1冊にまとめた本といえます。77講1冊と問題集をしっかりやり込めば東大・京大の入試問題にも対応できます。

教科書とどう使い分けるか

77講があっても教科書は手放しません。役割が違うからです。

  • 教科書:シャープにまとまっているので知識を確認して抜けを見つけるのに向いている
  • 77講:抜けが見つかったときにもう一度理解し直したり知識を補強したりするのに使う

抜けを見つけるのは教科書で埋めるのは77講という分担で併用するのがおすすめです。

レベル:定期テストから東大・京大まで

初学者でも読めるように書かれていて定期テスト対策にも使えます。一方で本文の「もっと広く・深く」や「参考」の枠は難関大の考察問題に対応した内容です。共通テストだけの人はこの枠を飛ばしてかまいませんが東大・京大や難関国立を目指す人は読んでおきましょう。

使い方:3段階で入試生物を極める

初学の段階で1ページ目から順に読んでいく使い方もできます。初学者でも大体わかるように書かれているので不可能ではありませんが最善の使い方ではありません。おすすめは次の3段階です。

第1段階:授業の補助として使う

学校の授業でも予備校の授業でもかまいません。YouTubeなら「ここみらいチャンネル」でシュンスケ先生が生物基礎を全5回・生物を全20回で全範囲通して講義しています。こうした授業で拾いきれなかった所や聞き逃した所を77講で読み直し文字ベースで頭の中の情報を整理します。

第2段階:問題演習の補助として使う

授業のあとはセミナーやエクセルやリードαといった教科書傍用問題集や標準問題精講を解いていくはずです。解いていくと「ここは知らなかった」「ここは間違えて覚えていた」という所が出てきます。そのたびに77講を開いて理解し直し知識を修正・補強します。過去問演習でも同じように使えます。

第3段階:巻末索引で用語を総点検する

入試生物を極めた人がやる少し独特な使い方です。巻末索引の約3,500語を片っ端から眺めていき知らない用語が出てきたらそのページに飛んで意味を確認します。77講を用語集として使うわけです。ここまでやれば入試生物はほぼ完璧に仕上がります。

一緒に使う問題集

  • 教科書傍用問題集:セミナー・エクセル・リードα。学校で配られたものでかまわない
  • 標準問題精講:思考問題の訓練をしたい人向け
  • 田部先生の問題集で揃える:『合格177問【入試必修編】』で頻出問題を固め続巻の『合格100問【定番難問編】』で教科書にない実験や図表を使った応用問題に進む
生物問題集 合格177問【入試必修編】(田部眞哉)の表紙 生物問題集 合格100問【定番難問編】(田部眞哉)の表紙 セミナー生物基礎+生物(第一学習社)の表紙 生物[生物基礎・生物]標準問題精講 七訂版の表紙

177問は過去問約5,000題から入試によく出る問題を絞り込んだ問題集です。同じ著者なので解説の考え方や用語が77講と揃っていて行き来しやすいのが利点です。

大森徹の最強講義126講との違い

似た立ち位置の本に駿台の大森徹先生による『大森徹の最強講義126講』があります。一般的にはこちらのほうがメジャーな参考書です。

生物合格77講大森徹の最強講義126講
著者・出版社田部眞哉/東進ブックス大森徹/文英堂
作り教科書を噛み砕く解説とイラスト中心受験に特化した参考書らしい作り
新課程未対応(旧課程)対応
向いている志望校東大・京大など国立の二次私大・医学部
大森徹の最強講義126講 生物(大森徹)の表紙

126講は受験にかなり特化した作りなので私大や医学部を目指す人にはこちらのほうが勧められるかもしれません。

一方で東大・京大のような国立を目指すならどれだけ思考問題に対応できるかが勝負になります。思考問題に対応するには思考力が要り思考力をつけるには知識を有機的に理解しなければなりません。有機的な理解を支えるのは筋の通った説明とイメージが湧く図の構造で、そこは77講のほうがうまくできています。

欠点:新課程に対応していない

77講の欠点を1つ挙げるなら旧課程の本だという点です。現行の2nd editionは2020年の刊行で2022年度から始まった新課程には対応していません。126講は新課程に対応しています。

ただし内容面で困ることはほとんどありません。筆者は現役と一浪の2回とも新課程で入試を受けましたが77講を使っていて困る場面はほとんどありませんでした。教科書と併用していれば範囲のずれは教科書の側で確認できます。

向いている人・向いていない人

向いている人
  • 生物基礎と生物の両方を受験に使う理系
  • 東大・京大や難関国立の二次で思考問題に対応したい人
  • 文字だけでなく図とイメージで理解したい人
向いていない人

生物基礎だけを使う人には分量が多すぎます。私大・医学部が第一志望で新課程にきっちり合わせたい人は126講を選ぶのもよいでしょう。

まとめ

生物は教科書がすべての科目で77講はその教科書を図録と入試情報ごと噛み砕いてくれる本です。授業の補助・問題演習の補助・索引での総点検という3段階で使い倒せば東大・京大の生物にも対応できます。生物全体の参考書ルートは生物の勉強法の記事で解説しています。

この記事で紹介した参考書

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