駿台の石川正明先生は「京大化学の神」とも呼ばれる化学講師です。その著書は難しいことで知られていますが本気で化学を得意にしたい人にとっては他にない魅力があります。この記事では石川先生の化学参考書8冊のレベルと使い方を整理し、どんな人がどの本を選ぶべきかを解説します。

石川正明先生はどんな講師か

石川先生は京都大学工学部を卒業し同大学院博士課程を修了した工学博士で、関西の駿台で教えてきた化学講師です。「京大化学の神」と呼ばれるほどのレジェンド的な存在で関西駿台の化学科を牛耳ってきました。東大・京大の青本の執筆者でもあります。

「石川正明チルドレン」と呼ばれる弟子の講師が多いことも有名です。筆頭はDoシリーズや問題精講シリーズを書いた鎌田真彰先生で、スタディサプリの坂田薫先生も石川先生の門下です。駿台の化学科にも石川先生の弟子がたくさんいます。

石川流の化学とは

石川先生の指導をひと言で表すなら大学でも通用する原理原則です。なぜそうなるのかに真摯に向き合うごまかしのない化学で、大学1・2年で学ぶ物理化学や有機化学の領域にも平気で踏み込みます。駿台には理系でアカデミックに強いイメージがありますが化学科でそのイメージを作ったのは間違いなく石川先生です。

たとえば有機化学は電子の動きで反応を説明する電子論で教えます。平衡では電気的中性の条件と物質収支の式を立てて連立方程式を近似で解くといった大学レベルの解き方を数多く取り入れています。

石川先生の化学参考書8冊

書名役割おすすめ度
新理系の化学(上)(下)授業内容をまとめた講義本石川先生の授業の補助として
原点からの化学 化学の理論・有機化学・無機化学・化学の発想法新理系の化学を丁寧に引き伸ばした講義本化学を本気で得意にしたい独学者に
原点からの化学 化学の計算計算問題の専門書多くの人におすすめ
新理系の化学問題100選最難関の問題集石川先生の解説が好きな上位層に

出版社はすべて駿台文庫です。

新理系の化学(上)(下)〈五訂版〉

新理系の化学 上巻〈五訂版〉の表紙 新理系の化学 下巻〈五訂版〉の表紙

石川先生の著書でいちばん有名なのがこの上下巻で2024年10月に五訂版に改訂されました。駿台で教えている内容を1冊の講義にまとめたテキストのような本です。

内容は非常に難解で大学の教科書と同じくらい難しく高校生が1人で読んで理解するのはかなり厳しいと思います。使うなら駿台で石川先生の授業を受けている人か、夏期講習や冬期講習で全国で受けられる石川先生の映像講座を受けた人が補助教材として使う形がよいでしょう。独学用の大学受験参考書としてはコスパがよくありません。

原点からの化学(理論・有機・無機・発想法)

原点からの化学 化学の理論〈改訂版〉の表紙 原点からの化学 有機化学〈六訂版〉の表紙 原点からの化学 無機化学〈四訂版〉の表紙 原点からの化学 化学の発想法〈三訂版〉の表紙

新理系の化学は玄人向けとして評判がよい一方で難しすぎるという声も当然ありました。そこでもっと優しい口調で丁寧に教えようというコンセプトで書かれたのが原点からの化学シリーズです。

シリーズのうち化学の理論・有機化学・無機化学・化学の発想法の4冊で新理系の化学上下巻の内容をほぼ網羅しているイメージです。上下巻にコンパクトに詰め込まれた内容を引き伸ばし初学者でもわかるように丁寧に書いています。ただしわかりやすいとは簡単に身につくという意味ではありません。根気強く向き合えば誰でも理解できるように書かれているということです。

化学を本気で得意科目にしたくて独学で学びたい人にはかなり有力な選択肢です。とはいえ東大・京大の入試を解くうえでも必須ではありません。どうしても理解しないと気が済まないという人以外は王道のDoシリーズや問題精講シリーズを優先するほうがよいでしょう。

原点からの化学 化学の計算〈四訂版〉:いちばんのおすすめ

原点からの化学 化学の計算〈四訂版〉の表紙

化学の計算は新理系の化学に載っている内容とは別物です。もとになっているのは駿台の夏期講習でいちばん有名と言ってもいい講座「化学特講Ⅰ(計算問題)」です。化学の計算問題だけに4日間向き合うという攻めた講座で、石川先生が関西で始めテキストも全面的に作っています。映像で受ける場合の講師も石川先生です。

この講座は計算問題を体系化し講座を完璧にすればあらゆる化学の計算問題が解ける状態に持っていくもので、その内容を書籍にしたのがこの本です。4日間の講座を1冊にまとめているので情報量はかなり削られています。それでも基本的な問題にきちんとした解説が付いているので繰り返し解けば化学の計算は得意になります。

化学の計算だけを集中的に扱う参考書はほとんどないので貴重で、多くの人に勧められる石川先生の著書の中でいちばんのおすすめです。

講座で学ぶという選択肢

化学特講Ⅰ(計算問題)は駿台生でなくても夏期講習に申し込めば全国どこでも受けられます。本の代わりに講座を受けるのもおすすめです。

石川先生の授業を録画した「原点からの化学」の映像講座シリーズも夏期講習で一般に開放されています。いくつかの章に分かれていて全部取ると20万円ほどかかるので費用を抑えるなら本の原点からの化学のほうが安上がりです。ただし本を独学で読み進めるのは簡単ではありません。

新理系の化学問題100選〈三訂版〉

新理系の化学問題100選〈三訂版〉の表紙

とにかく難しい本です。市販されている化学の参考書の中でいちばん難しいと言ってもいいと思います。東大・京大などのかなり古い問題が100問ほど並びそれぞれに解説が付いています。

これまでは標準問題精講を終えたあとにこの本に進むのが定番でした。標準問題精講を書いた鎌田先生の師匠が石川先生なので相性もよいと考えられてきたからです。ただ2026年8月に化学の上級問題精講が出たので標準問題精講の次はそちらのほうが接続がよいはずです。

化学[化学基礎・化学]上級問題精講の表紙

一方で原点からの化学や新理系の化学で学んだ人など石川先生の教え方が好きな人は解説の相性からこの本をやるべきです。その前に問題集を1冊挟みましょう。石川先生も執筆に加わった『理系標準問題集 化学〈五訂版〉』(石川正明・鎌田真彰ほか共著)を終えてから移るのがおすすめです。鎌田先生とその弟子の橋爪健作先生による問題精講シリーズで上級問題精講まで終えてから移るのもよいでしょう。

理系標準問題集 化学〈五訂版〉(駿台)の表紙 化学[化学基礎・化学]標準問題精講 七訂版の表紙

京大志望にはいちばん効く

石川先生の教えがいちばんダイレクトに効くのは京大化学だと思います。京大では毎年平衡の問題が出ていて、電気的中性の式や物質収支の式を立てさせる出題は2025年にもありました。京大化学に精通した石川先生の原点からの化学を読んだり講習を受けたり新理系の化学に触れたりしておくと京大の平衡問題で強みになります。

オーバーワークを恐れすぎない

オーバーワークにそれほど神経質になる必要はないと思います。受験に直接役立たない内容でも本格的な内容はやはり面白いものです。面白さや興味はモチベーションになりモチベーションは努力につながり努力は点数につながっていきます。

一度手に取ってみる価値はあります。買ってみて難しければ大学に入ってから読めばよく大学の授業の補助としてもとても役に立ちます。

まとめ:化学は先生を揃えるのがコツ

化学には有名な先生が何人もいます。石川正明先生・鎌田真彰先生・橋爪健作先生・坂田薫先生・照井俊先生・化学の新研究や新演習を書いた卜部吉庸先生などです。先生によって教える内容やどこまで大学の化学に踏み込むかが違うので教わる先生を揃えるのがコツです。

石川先生の弟子が鎌田先生で鎌田先生の弟子が橋爪先生です。坂田先生も石川先生の門下です。この系統の先生は教え方がほぼ共通しています。たとえばスタディサプリで坂田先生の授業を受けてから原点からの化学を使うといった形で教え方の近い先生でつなぐのも1つの選択肢です。東進なら鎌田先生の「ハイレベル化学」や橋爪先生の「スタンダード化学」などの講座もあるので石川先生の本と組み合わせるのもよいでしょう。

鎌田の理論化学の講義 三訂版(大学受験Do)の表紙

化学全体の参考書ルートは化学の勉強法の記事で解説しています。

この記事で紹介した参考書

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